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2021年1月
展覧会をする。退職する師を囲んでということらしい。そんな企画をしてくれる卒業生は大人である。気遣いに感謝しつつ、師が混じっている気配はできるだけ抑えよう。染織テキスタイルコースで学び、今なお活躍している作家たちにスポットを当てる。そんな展覧会にしよう。

3月
が、メンバー全員を貫くタイトルがなかなか見つからない。それは、この領域にはそれだけ多様な表現を含んでいるということであり、考えてみれば、それはそれとして嬉しい。多様性や変異体を喜び、受け入れ、育んできたことの証だと思う。

かつて
色について授業をしてきた。ただ従来の色彩論的な角度からではない。色には絶対値はなく、むしろ曖昧に捉えることを勧めてきた。たとえば藍で染めた色にも、多種類の名前がある。のぞき色、縹色、藍色、納戸色、、、その名は多い。印象や行為が名称になっている。色はざっくりと理解した方が楽しい。この考え方では再現性に問題があるとする近代の事情によって、色は数値化されることになったが、もともと、色は本来は曖昧な価値。色域は限りないグラデーションである。

4月
という意味を込めて、展覧会名は「Colors」とした。色についての考えに基づいていることを意識して見てほしい。大学で染めを学ぶことで得られる価値や表現はくっきりしていない。出品者の多様性こそ、今回の見せ場である。現代美術、伝統、プロダクト、衣裳、インスタレーション、平面、立体、タペストリー、テキスタイル、バッグ、アクセサリー、 あらゆる表現がオーヴに並ぶ。

5月
「染色」や「染めもの」という言葉の響きは、「今」が置き去りにされているかのような理解も根強い。しかし、ここのメンバーたちは「今」に敏感である。工芸という分野に身を置きつつ活動を続ける人、もうすっかり枠から飛び出てしまった人、いずれも新しい表現を獲得している。メンバーに共通するのは、全員が大学院でたっぷり考える時間を持ったこと、それによって新しい道具や技術も持てたことである。新しい思考は新しい技術を連れて来てくれるし、その逆もある。

7月
自粛を強いられた1年半を経て、再び美術館に行く機会が増えた。そこには、新鮮な作品と柔軟な思考があった。自由な空気で久しぶりに深呼吸ができた。美術は滋養である。繰り返すが、この12人は高い造形力だけでなく、表現へと向かう思考において新しい。これからもずっと鮮度のある表現、表現者であってほしいと願う。「鮮度」 それは本学染織テキスタイルコースの希望であり、教育に対する理想でもあったと、最後に私はささやく。