「Ecotone:染織・民具・デザインの三地点」

 小松クラフトスペース 2026年7月展覧会 

「エコトーン」Ecotoneとは生態学用語です。水と陸、森と草原のように連続的に変化する境界領域を指し、多様な生物が生息する豊穣のエリアです。

2025年、作者の1人である安部里香さんが「工芸デザイン領域」の修士論文のなかでエコトーンという言葉を援用しながら工芸デザインについて論じました。(1)「エコトーン」という言葉の出現により、今回の制作者3人―安部里香、野村春花、八幡はるみ―は、自分たちの制作姿勢を改めて意識化することができました。この視点を大切にし、今回の展覧会タイトルにしました。

まずは「工芸デザイン」という言葉について。「工芸」は作家や職人の手による少量制作であるし、「デザイン」は同時代的・先端的な量産のものづくりで、異なる領域だと理解してきましたが、その思い込みは徐々に崩れてきています。両者の境界にこそ気づくことがたくさんある、そういう理由から「工芸デザイン」というネーミングにはお互いを越境し合うことがあらかじめ意図的に含まれています。しかし、言うまでもなく、歴史的に日本には、芸術、工芸、デザインという言葉はなく、曖昧につながっていましたので、「いまさら」な話です。逆にいうと、越境という言葉を使わなければならないほど、近代はジャンルが細分化されてしまっていたのです。

この前提があって、再び「エコトーン」です。この視点で「工芸」と「デザイン」のグレーゾーンを活かそうと思いました。できるだけ自然の素材を使い、できるだけ自分の手で、ほどほどの量産をする。鑑賞もできるけれど基本的には使ってもらうものです。この「できるだけ」が湿地帯の思想です。柿渋染めの中量生産のカバン、楮や竹皮を使ったクッション、ハンドプリントした麻ワンピース、その他いろいろなアイテムを並べますが、そのいずれもが、「芸術」でもあり「工芸」でもあり「デザイン」でもあります。隣接するコミュニティー間を移行しつつ、暮らしのなかの「美しい民具」のような存在をめざします。私たちのエコトーンをご覧ください。

京都芸術大学名誉教授 八幡はるみ

 

(1)2025年度 京都芸術大学大学院「工芸デザイン分野」修了論文、安部里香「ひらかれた工芸 -工芸と周縁とのエコトーン-」

 

 

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